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名古屋地方裁判所 昭和40年(ヨ)45号 判決 1965年10月18日

申請人 渡辺三千夫 外二名

被申請人 社団法人全日本検数協会

主文

本件申請をいずれも却下する。

訴訟費用は申請人らの負担とする。

事実

(申立)

一、申請人

被申請人が申請人らに対し昭和三九年一二月二〇日にそれぞれ発した別紙第一4記載の業務を遂行すべき旨の各業務命令、及び各当直勤務命令の効力、被申請人が申請人らに対し昭和四〇年二月二五日にそれぞれなした、申請人らを係長から一般職員に降格する旨の各懲戒処分の効力を申請人らが提起する本案判決の確定に至るまでそれぞれ停止する。訴訟費用は被申請人の負担とする。

二、被申請人

主文同旨

(申請の理由)

一、申請人らはいづれも被申請人協会名古屋支部の従業員で係長の地位にあり、又全日本港湾労働組合東海地方名古屋支部全検分会(以下全検分会と称する)に所属する労働組合員である。申請人渡辺は前記名古屋支部副執行委員長であり、申請人有本は全検分会分会長である。全検分会の組合員たり得る者は係長以下の従業員であり、このことは被申請人協会も知つていた。

二  (一) 被申請人は昭和三九年一二月二〇日申請人らに対し、それぞれ別紙第一4記載の係長職務を遂行するよう命令した。(以下係長職務命令という)

(二) 係長職務命令は不当労働行為であり無効である。

別紙第一4記載の職務は係作業に対する作業計画だけでなく、主席の配員をも含んでいる。被申請人協会名古屋支部において各課は、課長、課長心得、係長、主任、主席、主席補助、検数員により構成されており、前記職務内容の主席の配員とは、現実には主席及び主席以下の検数員約三〇名の配員を意味するものである。そして従来主席の配員は課長心得以上の地位にある者が担当していた。右の如き職務権限を有する者は労働組合法第二条但書一号に列記された者に該当する。従つて右内容の職務権限を有する地位と組合員たる地位とは対立、抵触するものであり、右職務の強要は労働組合に対する支配介入であり、不当労働行為である。

(三) (1) 昭和三三年九月二五日被申請人協会と全日本検数労働組合との間で労働組合員の範囲につき、「課長心得監督以上は非組合員とする。人事、経理、労務、配置にたずさわる係長以上は非組合員とすることを相互に確認する」旨の合意が成立した。

(2) 昭和三五年三月二〇日被申請人協会、全日本検数労働組合、及び全日本港湾労働組合の三者の間で、右(1)記載の確認事項は、全日本検数労働組合が解散後その組合員により組織される新名称の労働組合と被申請人協会との間で効力をもつ旨確認された。そして全検分会は、全日本検数労働組合が解散後その労働組合員により組織されたものであり前記確認事項は被申請人協会と全検分会との間において効力を有している。

(3) 申請人らは、前記事項確認当時すでに労働組合員でありかつ、係長の地位にあつた。前記各労働組合と被申請人協会との前記確認事項に関する合意の反射的効力として、申請人らと被申請人協会との間の労働契約は、申請人らが全検分会の労働組合員として止まることを欲する限り、被申請人協会は申請人らに対し、人事、経理、労務、配置等の業務は行わせないとの内容を含むものとなつた。

(4) 申請人らは全検分会の労働組合員として止まることを欲しており、従つて被申請人協会は申請人らに対し、配員業務を行わせることはできない。

(四) 以上各事由により、申請人らは被申請人に対し別紙第一4記載の内容の労務を提供すべき義務を有しない。

三  (一) 被申請人協会は昭和三九年一二月二〇日申請人らに対し、それぞれ別紙第二記載の職務を内容とする当直勤務をなすよう命令した。(以下当直勤務命令という。)

(二) 右職務は単なる当直の範囲を越えた日常勤務である。

(1)  「車券発行等の事務取扱を行うこと」についての職務は船から事務所迄の車代の支給、帰宅のための車券の支給などの職務であるが、一夜に三〇件乃至四〇件の支給をしなければならないことが多く睡眠をとることができない状態である。

(2)  「業務、作業に関する連絡事項の記録をすること」についての職務は単なる記録だけでなく、同時に船の事故を荷主に連絡したり、手仕舞についての判断が要求されるのであり、しかもこれらの作業が当直時間の初めから終りまで行わねばならないことも稀ではない。

(3)  「従業員の帰、退社の時間を記録すること」については従業員がいわゆるサミダレ的に帰、退社するため、継続して職務を行わなければならない。

(三) 労働基準法第三二条の規定が存在するにもかかわらず同法施行規則第二三条により宿日直勤務が許されるのは、宿日直が常態としてほとんど労働する必要のない勤務と考えられるからである。従つて宿日直の勤務内容として認められるのは定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備に止まるのであり、それも相当の睡眠設備を有することが条件となる。前記当直勤務は右基準を越えるので労働基準法施行規則第二三条の許容する範囲を越えるものである。従つて被申請人協会が申請人らになした当直勤務命令は無効であり、申請人らは当直勤務をなす義務を有しない。

四  (一) 被申請人協会は、申請人らに対し、それぞれ昭和四〇年二月二二日附をもつて申請人らを一般職員に降格する旨の懲戒処分をなす旨の意思表示をなし、右意思表示は同月二五日申請人らに到達した。そして右処分は申請人らが本件係長職務命令及び当直勤務命令に従わないことを理由とするものである。

(二) 右懲戒処分は次の理由により無効である。

(1)  前記の如く、被申請人協会の申請人らに対する係長職務命令及び当直勤務命令はいづれも無効であり、申請人らは右いづれの業務をも行う義務を有しない。従つて申請人らが右業務の遂行を拒否したことを理由とする懲戒処分は無効である。又業務命令の無効理由の一つとして係長職務命令の不当労働行為性があり、従つてその業務の遂行を拒否したことを理由とする懲戒処分も又不当労働行為となり無効である。

(2)  申請人らが前記各業務の遂行を拒否したのは、全検分会の正当な組合指令に基づくものである。従つて申請人らの業務遂行の拒否は正当な理由によるものであり、又本件懲戒処分は申請人らが労働組合の正当な行為をしたことによる不利益な取扱いで不当労働行為であり、本件懲戒処分は無効である。

(3)  申請人らは、昭和四〇年一月一九日当庁へ係長職務命令及び当直勤務命令の効力の停止を求める仮処分の申立をなし、右申立事件は本件昭和四〇年(ヨ)第四五号仮処分申請事件として係属審理中であつた。本件懲戒処分は右仮処分申請事件の審理中になされたものである。或る法律関係が争われ、仮処分事件として審理中、その仮処分事件の目的を失わせるような新たな処分をなすことは、新たな仮処分申請を強要することになり、結局は不当処分と仮処分申請が無限に継続することになり裁判制度の否定である。特に本件の如きいわゆる労働訴訟において、多額の費用と労力、日数を必要とする訴訟を拡大させることは、資産を有しない労働者にとつては裁判の拒絶に等しい。訴訟において当事者は、訴訟制度を尊重し、信義、誠実の原則に従つて訴訟を進行すべき義務を有している。仮処分事件係属中において最少限度要求されることは現状の不変更であり、当該仮処分事件の目的を失わせ、さらに紛争を拡大させるような処分は許されない。本件懲戒処分は、前記の如く仮処分事件係属中に正当な理由なく、かつ、仮処分事件における劣勢を免れるためになされたものであり、懲戒権、ないしは訴訟手続における防禦権の濫用であり無効である。

五、被申請人協会は、申請人らが係長職務命令、当直命令に従わないことを理由に、申請人らに対し出勤を認めた上勤務につかせない処分をなし、更に本件懲戒処分をなした。申請人らと被申請人協会との間には申請人らの勤務内容、申請人らの地位につき見解の相違があり、本案判決確定をまつては急迫なる強暴、回復不可能な損害を蒙るので本件申請に及ぶ。

(申請の理由に対する答弁)

一、申請の理由第一項の事実は認める。

二  (一) 申請の理由第二項(一)の内、被申請人協会が申請人らに係長職務命令をなしたのは、昭和三九年一二月一六日である。その余の事実は認める。

(二) 申請の理由第二項(二)の事実は否認する。被申請人協会は後記の如く昭和三九年一一月一日から新機構を実施したものであるが、旧機構当時の係長の職務は別紙第三記載のとおりであり、新機構による係長の職務は別紙第一記載のとおりである。そして申請人渡辺は海上作業第一課、申請人有本は同第二課、申請人服部は同第三課のそれぞれ係長であり、その取扱う業務はいずれも現場における検数作業に関するものである。そして主席の配員という業務は、所属する課に専属する検数作業員を、割当てられた作業現場へ配置することであり名古屋支部全般の労務管理人事管理に関する事項ではない。そして機構の改革は被申請人協会の各支部において実施されており、又名古屋支部において新機構による係長一六名中一〇名は全日本検数労働組合名古屋支部の組合員であるが、それらの者は新機構による係長の職務を異議なく行つている。従つて別紙第一4記載の係長職務は、組合員たる地位に抵触せず、係長職務命令は不当労働行為ではない。

(三) 申請の理由第二項(三)の内、(1)の事実は認める。その余の事実は否認する。

(四) 申請の理由第二項(四)の主張は争う。

三  (一) 申請の理由第三項(一)の事実は認める。

(二) 申請の理由第三項(二)の事実は争う。係長の通常勤務と当直勤務との職務内容を比較すれば、当直勤務が通常勤務と全く異ることは明らかである。

(三) 申請の理由第三項(三)の主張は争う。

四、申請の理由第四項の内(一)の事実は認める。その余の事実は争う。

五、申請の理由第五項の事実は争う。

(被申請人の主張)

第一、本件申請の内本件係長職務命令及び当直勤務命令の各効力の停止を求める部分について、申請人らは本案として右各命令の無効確認を求める旨主張している。しかし右の如き本訴請求は、過去の法律行為の有効、無効若しくは法律関係の確認を求めるものであり、右の如き法律関係は確認訴訟の対象とならず、従つて前記の如き本訴の請求は訴の利益がない。よつて本件請求の内前記部分は不適法である。

第二、一、被申請人協会は、海事に関する公益を増進するため、貨物検数及検量業務の改善合理化を図ることを目的とする社団法人で、港湾荷役に対する検数に関する業務を行い、室蘭、東京、名古屋、大阪、神戸、広島、門司の各地に支部を有している。

二、被申請人協会においては、昭和三八年から昭和三九年にかけ業務機構の改革を行い、名古屋支部においても機構改革の必要性が認められ機構改革を行うこととなつた。従来名古屋支部においては、業務部門は貨物別に五課に分れ、各課の課員は四、五名であつたため、作業計画、作業点検が充分になし得ず、対得意先関係の渉外、事故処理の業務に重点がおかれ、一方約二〇〇名の作業職員は作業課に属し、同課は日々の作業員の配置に重点がおかれていた。従つて作業管理、技術管理がなされず得意先の評判は悪く、事故による求償金の額は増大し、放置すれば名古屋支部の事業の継続もあやぶまれるに至つた。

右のような状態をなくすため機構改革が行われたのであるが、新機構は、各作業課に専属の作業員を配置し、課長、係長主任、課員(作業員)とライン化し、作業員の技術管理、作業管理を充分行いうるようにし、作業課を得意先別に編成し、得意先に対するサービスを期すると共に、技術の向上、作業の平均化、事故の減少、無駄の排除などを計ることが主眼である。

三 (一) 被申請人協会は、昭和三九年一〇月二七日に同年一一月一日から新機構により名古屋支部の業務を行う旨を発表し、同年一〇月三一日港湾会館第二会議室において、全検分会関係者の参集を求め新機構についての説明会を開催した。

(二) 右説明会において、全検分会は、次の三点につき問題があるとして新機構の実施につき反対の態度をとつた。(1)倉庫配置作業員を二〇パーセント削減し他の職場へ配置換えすること。(2)係長が人事配置をすること、(3)係長の当直。そこで被申請人協会は右三点についての実施を留保し、全検分会と話合いを行うこととした。

(三) 以来、被申請人協会は、全検分会と数回にわたり経営協議会及び団体交渉をもつた結果、右第一点については昭和三九年一一月一二日の経営協議会において全検分会がこれを承認し、又第三点についても同年一一月一六日の経営協議会において、全検分会の要求により、「(1)当直者は一七時より翌朝八時まで勤務することを原則とし翌日一二時までは業務を続行し以後作業に支障なき場合は帰宅しうる。」とある部分を「(1)当直者は一七時より翌朝八時までの間にある一定の時間仮眠時間を取り得る勤務を原則とし翌日一二時までは業務を遂行し以後作業に支障なき場合は帰宅しうる」と修正することにより、全検分会はこれを承認した。

四、当直勤務の職務内容として通常勤務に属するものが含まれていたとしても、そのような勤務をなしたことを理由として時間外手当の支払を求めるのならば格別、当直勤務命令が無効であるとして当直勤務を拒否することはできない。

五、被申請人協会と全日本検数労働組合との間の労働組合員の範囲に関する合意については、被申請人協会は、昭和三六年一一月二九日ころ全日本検数労働組合に対し破棄通告をなした。又右合意の効力が全検分会に及ぶものとしても、被申請人協会は全検分会に対し文書により破棄通告をなした。

六、被申請人協会は、申請人渡辺に対して昭和三九年一二月一〇日業務部海上作業第一課長宮下亘を通じ、申請人服部に対して同月一一日同第三課長松田俊行を通じ、申請人有本に対して同月一四日同第二課長加藤延一を通じそれぞれ新機構に基づく係長の辞令を名刺と共に交付し、申請人らはいずれも異議なくこれを受取つた。申請人渡辺、同有本は労働組合の役員として前記新機構についての説明会に出席し、又経営協議会団体交渉にも出席していたので新機構による係長職務、当直勤務の職務内容を承知していた。又申請人服部に対しては辞令交付の際松田俊行から新機構による係長職務、当直勤務の職務内容を説明した。従つて申請人らは新機構による係長としての職務を行うことを承認したものである。

七、本件懲戒処分の理由は、被申請人協会名古屋支部において業務機構を改革したことにつき、申請人らは正当な理由なく、新機構に基づく係長職務の遂行、及び当直勤務を拒否したことであり、申請人らの右行為は就業規則

第六三条 次の各号の一に該当するものは、降格又は諭旨退職に処する。

3 社内の風紀、秩序を紊す行為のあつたもの

8 その他前各号に準ずる行為のあつたもの

第六四条 次の各号の一に該当するものは懲戒解雇又は諭旨退職に処する。

10 業務上の指示命令に不当に従わず、職場の秩序を紊し、又は紊さんとしたもの

14 その他前各号に準ずる行為のあつたもの

にそれぞれ該当するので軽い処分を選択したものである。

八、仮に以上の主張が認められないとしても、被申請人協会は、申請人らが係長の職務を遂行できないとして拒否したことにより、経営管理上の人事処置として、昭和四〇年二月二五日申請人らに対し、それぞれ申請人らの係長職務を解く旨の処分をなした。従つて申請人らはいずれも係長でなくなつたので本件申請は理由がない。

(被申請人の主張に対する申請人らの答弁)

一、被申請人の主張第一項の事実は認める。

二、被申請人の主張第二項の事実は不知

三、被申請人の主張第三項の内昭和三九年一〇月三一日会合が開かれたこと(その趣旨は否認する)全検分会が新機構反対の態度であつたことは認めるがその余の事実は否認する。

四、被申請人の主張第四項の事実は争う。

五、被申請人の主張第五項の事実は否認する。仮に破棄通告がなされたとしても一方的であり効力は生じない。

六、被申請人の主張第六項の内申請人らが辞令及び名刺を受けとつたことは認めるが、その余の事実は否認する。

七、被申請人の主張第七項の事実は争う。

八、被申請人の主張第八項の事実は争う。

(証拠省略)

理由

第一、被申請人は本件申請の内、本件係長職務命令及び当直勤務命令の各効力の停止を求める部分については、その本案に関し訴の利益がない旨主張する。しかし右各命令に関しては別紙第一4記載内容、及び別紙第二記載の内容の各労務を提供すべき義務の不存在を求めることにつき訴の利益あるものと認められ、従つて被申請人の主張は採用し得ない。

第二、一、被申請人協会は、海事に関する公益を増進するため貨物検数及び検量業務の改善合理化を図ることを目的とする社団法人であり、港湾荷役に対する検数に関する業務を行い室蘭、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸広島、門司の各地に支部を有していること、申請人らはいずれも被申請人協会名古屋支部の従業員で係長の地位にあり、全検分会に属する労働組合員であること、申請人渡辺は全日本港湾労働組合東海地方名古屋支部副執行委員長であり、申請人有本は全検分会分会長であること、全検分会の組合員たりうる者は係長以下の従業員であり、このことは被申請人協会も知つていたことは当事者間に争はない。

二、成立に争のない乙第二号証、第三号証、第六号証の二、第八号証の一、第一六号証の一、二、証人赤木勇の証言により真正に成立したものと認められる乙第一二号証、証人赤木勇、同宮下亘の各証言によると次の事実が認められる。従来、被申請人協会名古屋支部の業務部は五業務課と一作業課により構成され、業務各課は四、五名の課員で貨物別に註文取、アフターケアーなど主として対得意先関係の渉外の業務を行い、約二〇〇名の検数作業員は全て作業課に所属し、同課では業務各課から連絡を受けそれに基づき検数作業員を作業場に配置し、検数作業を行わせていた。右のような機構のため業務各課と作業課との連絡の不備、及び指揮系統の分離ということから作業管理が充分行えず、又作業課においては多数の検数作業員が所属していることから充分に技術管理が行えなかつた。そこで被申請人協会は名古屋支部の機構を改革することとなり、小島由春業務部次長、伊藤輝吉業務第五課長宮下亘業務課長が組織委員となり検討した結果、得意先別の作業課を新設すること、各作業課に約四〇名の検数作業員を専属させることを主たる内容とする新機構を実施することとなつた。そして新機構による係長の職務を別紙第一記載のとおりとし別紙第一4記載の配員を係長の職務としたのは、作業計画は係長が立てること、そして係長は一般の検数員との接触が多く、一般検数員の技能度その他の事項を最もよく知りうる地位にあることによるものであること、又係長は「当直者は一七時から翌朝八時まで勤務することを原則とし翌日一二時までは業務を続行し以後作業に支障なき場合は帰宅しうる」こと及び別紙第二(2)(3)(4)記載の職務を内容とする当直勤務を行うことが定められた。以上認定を覆すに足る証拠はない。

三、被申請人協会が申請人らに対し本件係長職務命令、及び当直勤務命令を発したことは当事者間に争はない。成立に争のない甲第四号証、第六号証、乙第五号証、第七号証、第九号証、証人海田浩明の証言(一回)により真正に成立したものと認められる乙第四号証、証人白井治良(一回)同宮下亘、同海田浩明(一回)の各証言、申請人渡辺三千夫、同服部芳夫の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を綜合すると次の事実が認められる。被申請人協会は、昭和三九年一〇月二七日名古屋支部掲示板に同年一一月一日から新機構に基づいて業務を行う旨の掲示をなした。そして同年一〇月三一日港湾会館第二会議室において組合側申請人渡辺三千夫外全検分会の役員、被申請人協会側業務部次長及び宮下亘外の者が出席し新機構についての説明会が開かれ、その席上検数員の配員、当直を含む係長の職務内容その他新機構の大要が宮下亘から説明された。全検分会は新機構実施につき反対の態度を取り、同日書面で被申請人協会名古屋支部長宛、新機構に反対し、係長の配員、倉庫勤務者の二割削減に反対する旨の抗議文を提出した。被申請人協会は全検分会が問題としている係長の配員、当直に関する職務などを保留した上同年一一月一日から新機構に基づいて業務を始めた。同月一一日名古屋支部の全管理職員全検分会の全役員が出席し経営協議会が開かれその席上、全検分会から新機構そのものについては反対しないが、(1)倉庫作業員を二〇パーセント削減すること、(2)係長が配員を行うこと、(3)係長が当直を行うことの三点につき反対する旨の申し入れがなされ、そこで右三点につき双方で話し合いを行う旨確認された。それ以降再三経営協議会が開かれ話し合いを行つた結果、(1)については全検分会が承認した。しかし、全検分会は同月一八日の職場集会において「倉庫作業員の二〇パーセント削減は認める。係長の配員及び当直は拒否する」旨決議し、同月一九日の経営協議会において被申請人協会に右決議事項を通告し、更に同月二五日文書にて右決議事項及び宿直は全組合員の当番制で行うことなどの申し入れをなした。その結果前記(2)(3)の事項については、全検分会と被申請人協会の間で話し合いが成立しなかつた。そこで被申請人協会は同年一二月一〇日の経営協議会において被申請人協会名古屋支部長が口頭で全検分会に対し同年一二月一六日から、保留していた係長の配員、当直に関する業務を実施する旨申入れ、同年一二月一六日申請人ら各所属の各課長を通じ、被申請人らに対し本件係長職務命令及び当直命令が発せられた。以上の認定を覆すに足る証拠はない。

四 (一) 本件係長職務命令の不当労働行為性につき判断する。証人白井治良(一回)、同宮下亘の各証言、申請人服部芳夫、同渡辺三千夫の各本人尋問の結果を綜合すれば、申請人らは従来から係長であつたが検数員の配置に関する職務は行つていなかつたこと、別紙第一4記載のいわゆる配員の職務とは、各日の作業計画に従つて自己の課に属する主席以下の一般の検数作業員(この内には全検分会に属する組合員が含まれている)を各作業現場へ配置する業務であり、配員を行うについては作業の内容、難易、各検数作業員の勤務年数、経験、検数技能、得意先に対する配慮、各検数作業員の勤務時間など稼働に対する配慮などを綜合考慮して行うことが必要とされること、そして配員の方法如何によつては検数作業員の作業内容、労働時間、賃金などに影響を及ぼすことが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。しかし以上認定の事実によればいわゆる配員の職務は、雇入解雇昇進異動に関する職務でないことは明らかであり、又使用者の労働関係即ち賃金、労働時間、人事など労働条件の基本的事項についての計画と方針、いわゆる労務管理に関する計画と方針に関する職務にも該当しない。そして又前記の如き配員の職務を有する者が使用者の利益を代表するものとも認められない。従つて申請人らの配員の職務権限を有する者は労働組合法第二条但書一号に列記された者に該当するとの主張は採用し得ない。又配員を行うことにより、申請人らと同様、全検分会に所属する組合員たる検数作業員を、各作業現場へ配置することとなる。しかしそのことをもつて当然に配員業務を行うことが、組合員たる地位と対立、抵触するものとは考えられない。そして配員の職務が前記認定の如くである以上、被申請人協会が全検分会の組合員たる申請人らに対し配員の職務の遂行を命ずることが全検分会の運営を支配しそれに対して介入することにもならない。よつて本件係長職務命令は不当労働行為であるとの申請人らの主張は採用し得ない。

(二) 次に労働組合員の範囲に関する合意の効力につき判断する。

昭和三三年九月二五日被申請人協会と全日本検数労働組合との間で労働組合員の範囲につき、「課長心得、監督以上は非組合員とする。人事、経理、労務、配置にたずさわる係長以上は非組合員とすることを相互に確認する」旨の合意が成立したことは当事者間に争はない。成立に争のない甲第一号証によれば、昭和三四年三月二〇日被申請人協会、全日本検数労働組合、全日本港湾労働組合の三者の間で前記確認事項をも含めて同日現在において被申請人協会と全日本検数労働組合及び全日本港湾労働組合との間にそれぞれかわされている協定書、覚書及び確認事項は、全日本検数労働組合の解散後、その組合員により組織される新名称の組合に引継ぐ旨の合意が成立したことが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。しかし全日本検数労働組合が解散し、全検分会が全日本検数労働組合の組合員によつて組織された労働組合であるとの事実を認めるに足る証拠がない。従つて前記争のない組合員の範囲についての被申請人協会と全日本検数労働組合との合意事項が被申請人協会と全検分会との間において効力を有しているとの申請人らの主張は採用し得ない。

(三) 以上の如く申請人らの、本件係長職務命令は無効であり、申請人らは別紙第一4記載の職務を行うべき義務を有しないとの主張は失当であり、申請人らは右職務を行うべき義務を有している。

五 (一) 次に当直職務の範囲につき判断する。

被申請人協会が申請人らに対し命じた当直勤務の内容は別紙第二記載のとおりであることは当事者間に争はない。証人海田浩明(一回)の証言により真正に成立したものと認められる乙第一四号証、成立に争のない乙第一七号証、第二一号証、証人白井治良(一回)、同高田勝の各証言、申請人服部芳夫、同渡辺三千夫の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を綜合すれば本件当直勤務とはいわゆる宿直勤務のことであり、当直勤務は係長の地位にあるもののみが行い他の従業員は行わないこと、その職務の内「車券発行等の事務」は検数作業員が作業場から事務所へ帰社するため、及びそれらの検数作業員が市電、バスなど一般の交通機関がなくなつた後、帰宅するために利用するタクシーの車券の発行業務であること、昭和四〇年一月一六日から同年三月二五日までの間に宿直者が発行した帰宅用車券件数は一件が一二日、二件が一一日、三件が一一日、四件が五日、五件が三日、六件が一日、七件が三日、八件が一日、一〇件が一日であり発行時間は午後一〇時三〇分ころから翌朝午前七時ころまでにわたつておりその内約三分の二は午前〇時までの間に約三分の一は午前〇時以降に発行されていること、車券の発行は突発的なものでなく宿直勤務中主要な日常の職務であること、「業務、作業に関する連絡事項の記録をする業務」については、単なる記録だけでなく、作業上の事故についての連絡や処理、例えば荷物が不足する場合には話合い荷主との連絡などの事故処理を行うことが要求され右のような作業上の事故は多いときには三件くらい発生すること、「従業員の帰、退社の時間を記録する業務」については被申請人協会の行つている検数業務の性質上、多数の検数作業員が午後五時以降も勤務する態勢になつていること、そしてそれらの検数作業員の帰、退社時間は一定しておらず午後五時以降翌朝の八時までの間にわたつていること、従つて従業員の帰、退社の時間を記録する業務は午後五時から翌朝の八時までにわたることが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。ところで労働時間につき原則として実働一日につき八時間、一週間につき四八時間を超え得ないとされているにもかかわらず労働基準法施行規則第二三条において断続的な業務としての宿直を認めたのは通常の宿直勤務は常態として殆んど労働する必要のない労働の密度の薄い勤務であるからである。従つてその勤務内容も定時的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態発生の準備等に限定されるものと解する。本件当直勤務の内容は係長の通常勤務とは異るとしても右基準を超えるものと考えられ本件当直勤務を行わせることは労働基準法第三二条に違反する。従つて時間外勤務協定その他の主張、立証のない本件においては申請人らは本件当直勤務をなす義務はない。

(二) 被申請人の全検分会が当直勤務を行うことを承認した旨の主張につき判断する。成立に争のない甲第六号証、乙第七号証、第八号証の一、三、第九号証、証人白井治良の証言(二回)により真正に成立したものと認められる甲第二号証、証人海田浩明の証言(一回)により真正に成立したものと認められる乙第八号証の二、証人白井治良(一回)、同宮下亘、同海田浩明の各証言、申請人渡辺三千夫の本人尋問の結果を綜合すれば、被申請人協会が定めた係長の当直勤務の内容は、「(1)当直者は一七時より翌朝八時まで勤務することを原則とし翌日一二時までは業務を続行し以後作業に支障なき場合帰宅しうる。」旨及び別紙第二(2)(3)(4)記載の如くであつた全検分会は新機構の実施に対し反対の態度を取つたが、昭和三九年一一月一二日に開かれた経営協議会において(1)倉庫作業員を二〇パーセント削減すること、(2)係長が配員を行うこと、(3)係長が当直を行うことの三点について反対する旨表明された。そこで右三点につき実施が保留されたまま被申請人協会名古屋支部と全検分会との間で話し合いを行う旨確認され、同月一二日以来連日話し合いが行われた。当直の問題については右話し合いの過程において項目毎に話し合つて行くこととなり同月一三日に行われた経営協議会の席上、申請人渡辺三千夫から(1)項に仮眠をとることができるように修正するよう提案され、同月一六日の経営協議会の席上(1)項を別紙第二(1)記載の如く修正する旨全検分会と被申請人協会との間に合意が成立した。全検分会は同月一八日の職場集会において「倉庫作業員二〇パーセント削減は認める。係長の当直配員は拒否する」旨決議し、同月一九日の経営協議会の席上被申請人協会に右決議を通告した。被申請人協会は全検分会に対し右席上当直問題につき更に審議して欲しい旨の申し入れをなし、全検分会は右申し入れを検討する旨表明した。その後全検分会は宿直は全組合員の当番制で行う旨を決定し、同月二五日文書にて右決定事項を被申請人協会に申し入れた。しかし被申請人協会は同年一二月一〇日に開かれた経営協議会において同月一六日から係長の当直を含め実施を保留していた事項を実施する旨申し入れ、本件当直勤務命令が発せられることになつたことが認められ、証人宮下亘、同海田浩明の全検分会は同年一一月一六日当直勤務については(1)項を修正することによりそれを承認した旨の証言部分は前記各証拠及び認定事実に照らしたやすく措信できず、他に全検分会が当直勤務を承認した事実を認めるに足る証拠はない。

(三) 被申請人の申請人らが当直勤務を承認した旨の主張につき判断する。

申請人渡辺が昭和三九年一二月一〇日業務部海上第一課長宮下亘から、申請人服部が同月一一日同第三課長松田俊行から、申請人有本が同月一四日同第二課長加藤延一からそれぞれ新機構に基づく係長の辞令と名刺を受取つたことは当事者間に争はない。証人宮下亘、同海田浩明の各証言、申請人渡辺三千夫、同服部芳夫の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を綜合すれば、申請人服部、同渡辺は昭和三九年一〇月三一日に開かれた新機構に関する説明会及び同年一一月一一日以降に開かれた新機構についての経営協議会に出席していたこと、又全検分会では新機構について再三職場集会を開いて検討し、申請人服部はそれらの職場集会に出席していたことが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。右事実によれば申請人らは各辞令を受取る際には当直勤務の内容を知つていたことが推認される。そして証人宮下亘、同加藤延一、同松田俊行の各証言によれば申請人らが辞令を異議を申立てることなく受取つたことが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。しかし先に認定した如く申請人らの所属する全検分会の係長の当直に関する反対の態度及び話し合いの経過などに照らし、右認定の事実によつて申請人らが当直勤務を行うことを承認したものとは認められない。

(四) 被申請人は、当直勤務をなしたことを理由に時間外手当の支払を求めるのならば格別当直勤務命令を拒否することはできない旨主張するが、前記の如く申請人らは本件当直勤務をなす義務を有しない以上、当直勤務命令を拒否することは違法でなく、従つて被申請人の主張は採用し得ない。

(五) 以上の如く申請人らは本件当直勤務をなす義務を有せず、本件当直勤務命令は違法である。

六 (一) 被申請人協会が申請人らに対し昭和四〇年二月二二日附をもつて申請人らを一般職員に降格する旨の懲戒処分の意思表示をなし、右意思表示は同月二五日申請人らに到達したこと、右懲戒処分は本件係長職務命令及び当直勤務命令に従わなかつたことを理由とするものであることは当事者間に争はない。

(二) 証人宮下亘、同白井治良(一回)の各証言、申請人服部芳夫同渡辺三千夫の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、申請人らは本件係長職務命令及び当直勤務命令を拒否し、それに従わなかつたことが認められる。成立に争のない乙第一七号証によれば、就業規則には、

第六三条 次の各号の一に該当するものは降格又は諭旨退職に処する。

3 社内の風紀、秩序を紊す行為のあつたもの

8 その他前各号に準ずる行為のあつたもの

第六四条 次の各号の一に該当するものは懲戒解雇又は諭旨退職に処する。

10 業務上の指示命令に不当に従わず職場の秩序を紊し又は紊さんとしたもの

14 その他前各号に準ずる行為のあつたもの

旨規定されていることが認められる。前記の如く申請人らは本件当直勤務命令に従うべき義務を有しなかつたが係長職務命令には従うべき義務を有していた。そして申請人らが係長職務命令に従わないことにつき何ら正当な理由があつたとは認められないので、申請人らの係長職務命令に従わなかつた行為は前記就業規則の規定に該当する。

(三) 証人白井治良の証言(一回)、申請人服部芳夫、同渡辺三千夫の各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を綜合すると、申請人らが本件係長職務命令及び当直勤務命令を拒否しそれに従わなかつたのは、右各命令を拒否せよとの全検分会の指令に従つたものであることが認められ右認定を覆すに足る証拠はない。前記認定の如く申請人らは別紙第一4の職務を行うべき義務、従つて又本件係長職務命令に従うべき義務を有していたものであるところ本件係長職務命令を拒否すべきとの組合指令は申請人らの労務提供義務に違反し正当なものとは云えず、従つて右組合指令に従つた申請人らの本件係長職務命令の拒否は正当な組合活動とは云えない。一方申請人らは本件当直勤務をなす義務従つて又当直勤務命令に従う義務を有しなかつたものであるから当直勤務命令を拒否すべきとの組合指令、それに従つた申請人らの当直勤務命令の拒否は正当な組合活動と考えられる。しかし本件において申請人らの係長職務命令を拒否しそれに従わなかつた行為は本件懲戒処分を正当ずける充分な理由と考えられ、申請人らの当直勤務命令を拒否した行為がなかつたとしても本件懲戒処分がなされたものと考えられる。従つて本件懲戒処分が申請人らが組合活動を行つたことによる不利益な取扱いに該当するものとは云えない。又前記の如く係長職務命令が不当労働行為であるとは認められないので、係長職務命令が不当労働行為であり、従つて申請人らのそれを拒否したことを理由とする本件懲戒処分は不当労働行為となるとの主張は採用し得ない。

以上の如く本件懲戒処分が不当労働行為であるとの申請人らの主張は採用し得ない。

(四) 申請人らが本件係長職務命令及び当直勤務命令の効力の停止を求めて本件昭和四〇年(ヨ)第四五号仮処分申請を当庁へ申立た日が昭和四〇年一月一九日であることは本件記録により明らかであり、従つて本件懲戒処分が昭和四〇年(ヨ)第四五号事件が当庁に係属し審理中になされたことは明らかである。一般に一法律関係につき争がありそれについての仮処分申請事件が係属中に新たな処分乃至は権利行使をなすことは、それが当該仮処分申請事件の目的を失わせる結果となるような場合であつても、それが他に何ら正当な理由がなく単に当該仮処分申請事件の目的を失わせることのみを目的としたものであれば権利の濫用という問題が考えられうるが、そうでない限り原則として許される。そして、その新たな処分乃至は権利行使により、当該仮処分事件の申請人は新たに仮処分申請その他の行為をなす必要にせまられるが、そのことのみにより処分乃至は権利行使を否定することはできない。このことは本件の如きいわゆる労働関係においても同様である。本件において申請人らのなした係長職務命令拒否は、それが組合指令に基づいたものであるとはいえ申請人らの労務提供義務に違反した違法な行為であり正当な理由によるものとはいえない。そしてそれを理由になされた本件懲戒処分は正当な理由に基づくものであり、本件昭和四〇年(ヨ)第四五号事件につきその申請の目的を失わせるためにのみなされたものとは認められない。従つて本件懲戒処分は権利の濫用になるとは認められない。

(五) 以上の如く申請人らの本件懲戒処分が無効であるとの各主張は理由がなく、又本件懲戒処分は正当な理由があるものと認められるので有効なものと言わなければならない。

七、以上の如く申請人らの本件申請の内、各係長職務命令及び各懲戒処分の効力の停止を求める部分は被保全権利についての疎明がなく、又本件懲戒処分により申請人らはいづれも係長たる地位ではなくなつたのであるから申請人らが係長たる地位にあることを前提とする当直勤務義務の不存在の確認を求める本案の訴は、訴の利益を欠くことになり従つて各当直勤務命令の効力の停止を求める部分についても被保全権利の疎明を欠くことになり、よつてその他の主張につき判断するまでもなく本件申請はいずれも理由がないので却下することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九三条を適用し主文のとおり判決する。

(裁判官 山田正武 浅野達男 寺崎次郎)

(別紙第一)

係長職務表

職務No.

職務

摘要(監督上の要点)

1.

上司に対する報告

職務No.2以下の必要事項は残らず迅速に報告する事(課長宛)

2.

部下の指導並養成(勤務時間、作業状態、技能、従業員)

職務項目No.4、6を通じ日常の各担当係長の部下として指導し命令、指示に順応し得る従業員たるに足る教育を行うこと、諸規則は絶対に守らせること(良くほめ厳格に叱責する。)

3.

得意先との作業打合わせ

各担当係長は当日、前日のCARGO 内容ALONG、SIDE等、特に重点打合せを行う。

4.

係、作業に対する作業計画、並、主席の配員と配員の確認

作業を計画し、各係長必要に応じ協議し最良の計画を立て良く人的配置を確認(前日配置)し必要な手段を講じ当、明日の作業の完全遂行に備える。

5.

作業担当主席に対する作業指示

重点 CARGO・H・SIDEに対するH割当て、手仕舞、作業進行中の見廻りの指示

6.

作業の指導、監督、作業状況の把握並に連絡(W作業の依頼について指導、点検)

H内作業の状態を係長が点検しH・SIDEの位置CARGOのコンデイシヨンを確めH・SIDEに注意し主席に指示を与える。作業の進行状況、問題点をその都度可及的、速やかに得意先連絡、上司に報告する。W作業の場合特にその場での解決に留意する。

7.

事故に対する報告並に処理(手仕舞処理の完全化)

イ 輸出の場合、その場での解決が重大であるW作業の場合その場での解決の判断を適切に行い、処理する状況に依り荷繰りを行う。

ロ B/N、M/R等、手仕舞に立合い、依頼者の利益を忘れず完全化に努力する。

8.

作業計画進行表の作成報告

担当者の監督振りが此の書類に集約される。当、前日の監督、点検の結果がこれに書かれ業務担当が作業を通じて依頼者に完全なレポートが出来る全べてのレマークは記すこと。

9.

作業諸報告の点検

イ作業依頼W証明の点検

人員的な重複時間等なき様、又不正出費の有無を検し、主席者に指導を行う。

ロ就業月報の点検及検印

CARGOの状態、艀の状態、ステベの作業時間、レポートの記載内容を検し厳格に行う。

ハ事故速報の作成並に報告

対得意先との処理方法等、当時の状態が記憶に再現出来る様、極めて完全化に努力する。

ニ諸手当の点検

特殊作業手当、出金伝票等誤りなき様点検する。

10.

備品、消耗品の管理

ボールペン一本二〇円~三〇円することを考え適切に支給を行うこと。

ヘルメツト等の各課員に対する貸与品の点検管理を行うこと。

11.

備考

係長職は作業進行を行う上の最高で直接の監督者であり、その一挙手一投足は以下部下の良く見る処であり課の統制が規律正しく遂行される作業に具体的成果を生ぜしめるか否か、全般的評価が課せられるは論を俟たぬ処です。「ややもすると規則一点張りでは」との論議があるが規則に則らなければ作業の統制はあり得ぬし、その中からは命令、指示の伝達も忠実に履され得ない事を認識し、その職務の完全遂行に鋭意努力することが必要である。

(別紙第二) 当直者の勤務について次の通り定める

当直者(宿直)は業務部係長及係長職務者をもつて当てる。

(1) 当直者(宿直)は一七・〇〇より翌朝〇八・〇〇迄の間にある一定の時間仮眠時間を取り得る勤務を原則とし翌日一二・〇〇迄は業務を遂行し以後作業に支障なき場合は帰宅し得る。

(2) 当直者(宿直)の欠直は認めず(但し、交替勤務はその限りではない)

(3) 当直者(宿直)にして事故等のため当直出来ない場合は速かに調整課長又はその代行者に届出る事

(その際調整課長又はその代行者は交替者について各課長と打合せ調整し定める事)

(4) 当直者(宿直)は次の通りの執務を行う。

イ、車券発行等の事務取扱を行う事

ロ、業務、作業に関する連絡事項の記録をする事

ハ、緊急、要務に対する処理及記録をする事

ニ、従業員の帰、退社の時間を記録する事

ホ、宿泊従業員の人名を記録し仮眠所の管理、点検を行う事

ヘ、火災、盗難等に関する予防措置を講じ、万一非常事態発生の際は連絡及処置をする事

(非常持出しは、非常持出しの明示してある器物とする)

ト、その他当直(宿直)勤務中に於ける状況を記録する事

チ、作業に必要のない電燈は極力消燈する事

リ、夜間用事のない場合は仮眠を取る事が出来る

ヌ、一九・〇〇に社内外を見廻り点検を行う

1 ガス、電気等の点検

2 正面玄関以外の出入口閉鎖

3 自転車置場の閉鎖

4 ロツカールームの窓並出入口の施錠

(別紙第三)

係長の職務権限

1 基本的任務

協会の業務管理に関するラインとして所属主任及び課員の指揮監督指導をすると共に主任候補を育成し業務を遂行することに依り課長、監督を補佐することを基本的任務とする。

2 責任事項と権限

係長は課長、監督より委任された責任事項及び権限の範囲内において協会の方針、関係諸規程及び承認された計画にしたがつて以下述べる職務遂行の責任があり、その遂行に必要な権限を有する。

2―1 一般的責任事項と権限

(1) 業務に関する計画、報告

1 業務遂行のため効果的な管理方式を計画し上司に具申する。

2 作業の質と量に応じ適正な配置を計画し実施する。

3 業務関係報告書を作成提出する。

4 業務改善案を立案する。

(2) 人事

1 主任、主任候補者の更迭、任命又は賞罰に関する提案をする。

2 主任、課員の人事考課

10 業務関係統計資料を作成提出する。

3 重要な関係

3―1 所属課長、監督に対し

自己の基本的任務、責任事項と権限及び諸関係をいかに遂行したか、またそれをいかに解釈適用したかを報告する義務がある。

3―2 関係先に対し

自己の職能、責任事項、権限の遂行ならびに諸関係の処理に当つて必要な交渉を行なう。

以上

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